アルバイトの専門的な活用方法

(商業界 飲食店経営1997年9月号掲載)

体験的店長実務ステップアップ講座第13回目

マクドナルドの店長は人物金の管理を行うことにより最高のQSC(品質、サービス、クレンリネス)を実現する必要がある。最高に良いQSCを維持するには店長のフロアーコントロールが最も重要だ。金と言う面では売上と利益管理をするためにペーパーワーク(書類管理)をしっかり行う。人は当たり前のことだが人材育成だ。物の面では建物、設備備品、厨房機器のメインテナンスを行なわなければならない。当然の事ながら店長だけでは店舗の運営はできず、優秀なアシスタントマネージャーは不可欠だ。しかしながら、当時のマクドナルドのように新規開店をどんどん行い、急成長している場合には、ベテランの優秀なアシスタントマネージャーをふんだんに抱えることは許されず、新人のアシスタントマネージャーを育成しながら店舗のQSCを最高の水準に高めなければいけないと言う矛盾を要求される。先月号の様に仕事の分担とトレーニングの手順を決めてもやはり店舗の運営は厳しい物がある。当然筆者も、体がいくつ合っても足りない状況に陥り、SVに部下に対する権限移譲をアドバイスされ実行したが、それでも問題は解決できなかった。

そこで、店長の仕事内容の優先順位付けをし、店長でなければ絶対にできない仕事と部下に任せられる仕事に分類することにした。ペーパーワークは店舗の数値管理そのものがきちんと行われていれば店長が直接やる必要がない。アルバイトのモラルと管理体制がきちんとできあがれば後は手順通りの書類管理ですむわけだ。ペーパーワークで最も重要なのは出てきた管理数値が良いのかどうかと言う判断と、問題があるときに何が原因で、どのように改善するかという事であり、直接のペーパーワークを自ら行う必要はない。

また、物の面では建物、設備備品、厨房機器のメインテナンスを行うのも店長自ら行う必要はない。物がきちんと維持されていればよいわけだ。

1)<<アルバイトに大事な書類管理を任せるだろうか?>>

以前から店舗には女子マネージャーを配属して書類管理を行っていたが、問題も発生していた。女子社員マネージャーであるからどうしてもペーパーワーク管理が中心であり、新人のアシスタントマネージャーがペーパーワクをやる必要が無く、覚えなくなってしまう。更に問題は女子マネージャーの年齢がアルバイトに近すぎて彼らと遊んでけじめが付かないと言う問題が発生し、女子マネージャーが他店へ異動してからは女子マネージャーの補充はしていなかった。しかし、女子マネージャーがいればペーパーワークの負担は減ることに違いはないので再度女子マネージャーを育成することにした。但し、ペーパーワークだけしかできないのではもったいないし、社員では人件費の無駄だ。ペーパーワークに必要なのは、1日に数時間、特に週末、月末ワークの準備くらいだ。そこで、社員ではなくアルバイトの女子スイングマネージャーを育成することにした。ペーパーワークがないときにはフロアコントロール、新人女子のオリエンテーションやトレーニングに当たらせることができるわけだ。

勿論どんな人間にもペーパーワークを任せられるわけではない。人間には適性があり、肉体的な仕事が好きで書類なんか見るのもイヤだという人もいる。ペーパーワークが嫌いな人間に書類管理をやらせたらみるも無惨な数値管理になり、短気なSVと軍事顧問を激怒させるのは火を見るよりも明らかだ。そこで誰が適性があるかを判断することにした。そのためには普段からアルバイトの履歴書に目を通しどんな学校に行っているか、将来どんな仕事に就きたいのかを雑談から聞き出す必要がある。そして、ある女子アルバイトに白羽の矢を立てた。彼女はもう1年間のアルバイトに経験もあり、将来は会社の秘書になるべくビジネススクールに通っている。そして筆者の不得意な字が綺麗であるというのが決定打だった。ちなみに筆者の字が汚いのは社内では有名な話で、後に全国運営部長時代に藤田社長に出した報告書のあまりの字の汚さに、さすが辛抱強い藤田社長も堪忍袋の緒を切って、「なんやこれ、あんまりやないか、社長はなー、こんな汚い字をゆうっくり読むほど暇やないんや。ワープロで打ちなおしてんか!」と言うお叱りを被った。これが筆者がパソコンを始めるきっかけとなったわけで、決して筆者がパソコン好きだったわけではない。

勿論最初から重要な仕事を任せるわけには行かないから、閉店間際の金銭の勘定、日報の締めからオンザジョブで確認しながら適性を判断していった。トレーニングを行うに当たってまず彼女の職務内容を明確にし、どんなことを行うかのタイムプランニングまで明確にした。そして、どんなトレーニングを行ったかも明確にし、他のマネージャーにも彼女がどんな能力がありどんなフォローをすればよいのかを明らかにした。(資料1を参照)

その結果、数ヶ月で殆どの書類管理をできるようになり、店長の仕事を大幅に削減することに成功した。また、報告書が綺麗に書けるようになったのでSVからも仕事がはかどって良いと評価された。

資料1:女子スイングマネージャーの業務内容の取り決め

◆ S子の業務について
1.範囲

1.オープンマネージャーと同じ仕事ができること。特にペーパーワークに関してのオープンマネージャーの仕事を補佐すること。又、月間ペーパーワークを準備する。

2.ただペーパーワークだけではなく、その他新人のトレーニング及びスウィングマネージャーと同じ程度のフロアコントロールをすること。

3.スウィングマネージャーと同程度の仕事をするが、ペーパーワークに関してはマネージャーが必ず確認する。

2.時間帯…原則として10:00~16:00とする。DATA SHEET(給与計算)、月末ワークの時は変更することがある。

3.勤務日程…週5日を原則とする。日曜は出勤する。
* ペーパーワークの内容

1)デイリーワーク

a.売上伝票、納品伝票、店内使用届の作成及びファイル

b.キャッシュカウント

c.現金日報のチェックと完成、セールスジャーナル(売上月報)への転記

d.納品書のファイル、品目別在庫月報への転記

2)月間ワーク

a.月末ワークの準備
・ 月間仕入表の記入のチェックと来月分の準備(新しいのを作る)
・ 品目別在庫月報のチェックと来月分の準備
・ 労務費統計表のチェックと来月分の準備
・ セールスジャーナル(売上月報)のチェックと来月分の準備

b.DATA SHEET(給与計算)の作成と準備
・ 月末と15日の分のチェック
・ 新しいタイムカードの準備
・ DATA SHEET記入

c.B.M.G.(無料クーポン券)の集計とプロモ(販売促進)報告書への記入

d.百貨店への請求書(15日、月末)のチェックと記入、本社への提出、百貨店会計への提出。

3)その他の業務

a.マネージャーデスク周囲の清掃

b.各書類ファイルの保管と管理業務

◆ S子へのトレーニング
1. モラルについての話…書類の管理など、重要な仕事であるという認識をもってもらった。

2.マクドナルドの管理システム全般についての説明(ペーパーワークマニュアルに沿って説明)。人、物、金の管理とその書類の関連性とその重要性。

3.オープンマネージャーの業務内容とその時間的な流れをマネージャーの1日を参考に説明。

4.各ディリーワーク、月間ワークについては各1回以上やっている。 以上に関して 月 日と 月 日にかけてトレーニング済み。なお、その他のディリーワーク、月間ワークについては今後さらにトレーニングをO.J.T.で行う予定。

2)<<アルバイトに建物、設備備品、厨房機器のメインテナンスを任せる>>

書類管理の問題は解決したかのように思われたが、ここで思いがけない問題が発生した。それは、女子スイングマネージャーのボーイフレンドだ。当時のマクドナルドには色々な人間がおり、アルバイトをする理由が単なる金だけではなく友人を作りたい、ボーイフレンド、ガールフレンドがほしいという不純な動機の者もいる。

おもしろいことに優秀なアルバイトが優秀なアルバイトをパートナーに選ぶのではなく、以外とどうしようもない奴を選ぶ例が多い。彼女もその口だった。彼女の選んだボーイフレンドは1年以上も働いているが、モラルも低く夜になるとアルバイトを引き連れて飲みに行くという頭痛の種だった。

勿論、以前いたどうしようもないアルバイトよりもコントロールはしやすいのだが、彼とつきあいだしてから彼女の仕事の質が落ちモラルも低下しだしたのには困った。つきあっている男子より女子の方が身分が上になると、男子がメンツをつぶすので嫌がるという日本独特の問題が発生してきたわけだ

。 余談だが、社員同士でも同じ問題が発生する。筆者が地区運営部長時代にある優秀な女子ファーストアシスタントマネージャーが程度の低い店長と結婚をすると言うことで退職をするという。筆者にとってはどちらかを選べと言われたら、女子ファーストの方が遥かに優秀であり、その店長に「おまえが辞めろ」と怒り狂ったことがあるが、残念ながら日本の習慣で退職されてしまった。

対策としてボーイフレンドを止めさせるのは簡単だが、そんなことをすれば折角育てた女子スイングマネージャーも止めてしまう。彼もスイングマネージャーにすれば良くなるかと思い、本人に希望を聞いたら「朝は眠いから、夜は遅くなるからイヤだ」とわがままな事を言う。そこで、彼とじっくり話を聞いてみた。そうすると、彼の趣味は若い学生らしく車であった。それもかなり好きで、車のメンテナンスを自分でやり、ファンベルト、スパークプラグ、オイル、フィルターの交換なんかお手の物だという。車の話をし出すと目の色が変わりすごくポジティブな態度になる。学校も大学の工学部に通学し将来はエンジニアになりたいという。やっと彼にピッタリの大事な仕事が見つかった

当時はオイルショックの後であり、全ての経費が上昇し、損益計算書が大変苦しくなっていた。特に、電気水道光熱費の急上昇が大きな問題となりつつあり、それらを消費する空調機器や調理機器の正しい調整、メインテナンスが脚光を浴びつつあった。

社員が専門的な建物や設備備品、厨房機器のメンテナンスをやるのは専門家ではないから時間がかかるし無駄なように思われるし、メンテナンスを行うためには機械の作動原理などの基本的なことを知っていなければいけないなどすごくトレーニングに時間がかかるように思うが、マクドナルドで要求しているのは基本的にメンテナンス(維持)であり、リペアー(修理)ではない。

車を考えてみよう。車にもメンテナンスとリペアーがある。メンテナンスは6ヶ月点検や12ヶ月点検、2年ごとの車検がある。この際に行うのは消耗品の点検と交換だ。ガソリンエンジンの場合、ガソリンを気化させ空気と適正な比率で混合させ爆発燃焼させる。エンジンを長持ちさせるに重要なのは適正な空気とガソリンの比率(空燃比)だ。空気をそのまま吸い込むと、空気中のゴミが一緒に入りエンジンのシリンダー内部に入り、傷つけることになる。そこで、空気のフィルターを取り付ける。ガソリンもそうだ。ガソリンにも異物が混入しているので燃料フィルターを取り付けて異物を濾過する。そのフィルターは走行距離に応じて交換する。空気のフィルターが目詰まりを起こすと、ガソリンに対して空気の量が少なくなり、完全燃焼しない。そうするとカーボンがエンジン内部に堆積したり、スパークプラグにカーボンが付着し、燃焼が不規則になり燃費と加速が悪くなるばかりかエンジンの寿命が大幅に短くなる。燃料フイルターが詰まると十分なガソリンがシリンダーに行かず、エンジンの馬力が落ち加速が悪くなる。

この原理はエアコンのメインテナンスと同じだ。エアコンの原理はフレオンガスを使い、熱を異動するわけだ。夏場であると室内で冷気を出すためには室外機のコンデンサーで放熱する。飲食店の室内の空気はタバコの煙や調理の油煙で汚れており、室内機のエバポレーターにそれが付着すると熱交換ができなくなるので車と同じく室内空気のフィルターを設置し定期的に洗浄するようになっている。それを怠ると空気の流れが悪くなり冷却が旨く行かないだけでなく、フレオンガスの循環に問題を生じコンプレッサーを破壊してしまう。室外機のコンデンサーも同じで、コンデンサーを定期的に洗浄しないと放熱が旨く行かず冷却能力が落ち、コンプレッサーの熱が上昇し最悪の場合焼き切れてしまう。コンデンサーは車で言うとラジエターであり定期的な洗浄をしないと夏場にオーバーヒートして渋滞路で故障をしてしまう。

車のメイテナンスをきちんとやるには時間とお金がかかるが、その結果修理が減少し、路上での故障が無くなる。エンジンオイルとエアクリーナー、燃料フィルターをきちんと定期的に換えておけばエンジンは30―40万キロは使える。スパークプラグもきちんとメンテナンスすれば燃費も良くなるし、加速も良くなる。走行性能が良いだけではなく車の状態がよいから次の車に乗り換えるときに下取り値段が高くなり、結局経済的になる。

エアコンも同じだ。空気のフィルターをきちんと洗浄することにより冷却が良くなるだけでなく、電気代も大幅に減少し、寿命も長くなり投資額の削減ができる。このように車と調理機器や設備機器のメインテナンスの考え方は全く同じであり、車の知識があれば殆どのメインテナンスが可能だ。メインテナンスというと機械の知識が必要なように勘違いするが、基本的に機械の知識は殆ど必要ない。必要なのは注意力だ。機械を新品の時と同じように保つために決められた掃除をきちんとやる、ネジやボルトがゆるんでいればそれを締めましする。それだけで機械のメインテナンスは95%は達成する。後はエンジンオイル、スパークプラグやフィルターなどの消耗備品の定期交換だ。消耗備品の交換は基本的に素人でも簡単にできるようにしてあり説明書もきちんと書いてあるから誰でもでできる。大事なのは決められた頻度と期間できちんと実行すると言うことだ。

水道光熱費というように機械には水、電気、ガスの知識が必要不可欠だ。ところがこの3つを知っている専門家というのは案外少ない。大学の工学部は機械工学、電気工学、燃焼工学、流体工学など専門分野に分かれている。車というのは実は全ての工学の知識が必要だ。水で言えば冷却装置のラジエターがある。ラジエターの水には冬になると凍らないように不凍液を入れている。不凍液は効力が落ちるので2年ごとに交換する。また、不凍液の濃度も重要だ。あまり入れすぎると冷却能力が落ちる、低いと冬に凍結し最悪の場合エンジンシリンダーに亀裂が入ってしまう。冬は外気温が低いからラジエターの水があまり循環すると温度が下がりすぎて燃焼が適性に行われず、シリンダー内部にカーボンがたまり寿命が短くなる。そのためにサーモスタットがついており、水温を関知して循環水量を制御する。サーモスタットは古くなるから時々作動をチェックし交換する必要がある。そのようなサーモスタット制御する水冷装置は、水冷の空調機、製氷器やアイスクリームフリーザーで使われており、サーモスタットが壊れると水が垂れ流しになり、車と同じく定期的にチェックしたり、交換をする。サーモスタットの弁はたいていゴムでできているから、長くつかっていると水垢がつき完全に閉まらなくなり水が漏れる場合がある。そんな場合はゴムの部分を拭いて揉んでやるときちんと作動するようになる。水冷の空調機は車のラジエターと同様に水の定期交換とラインの洗浄が必要だ。

ラジエターには冷却装置のファンがついており、クランクシャフトの動力をプーリーからファンのプーリーへ伝達するのにファンベルトを使用している。当時のファンベルトはまだ良い材質のゴムや芯材が開発されていなかったから、よく切れる。また、ラジエターとエンジンの間で冷却水を流すゴムホースも同様でよく亀裂が入り定期チェックと交換が必要だった。同様なベルト駆動を採用しているのはグリドルやフライヤーなどで発生した高温の排気熱の排気ダクトだった。排気ダクトファンの駆動は電気モーターからプーリーを使用してファンベルト出駆動するのは全く同じ原理で、同種のファンベルトを使用している。その定期点検や交換方法は車と全く同様だ。ファンベルトが切れると車はオーバーヒートを引き起こし最悪の場合にはエンジンを焼き切ってしまう。排気ダクトはもっと危険で最悪の場合には排気ダクト内に溜まった排気が高温になり火事を引き起こす。店舗が百貨店に入っているような場合には大災害になるので定期的なチェックと交換は必要不可欠なわけだ。

車のエンジンはキャブレターから空気を吸い込むときに不圧を生じるようにしてそこからガソリンを吸い込むようになっている。このキャブレターの構造とインテークマニフォールド(吸気管)の構造、考え方は、厨房機器の燃焼機器である、グリドル、フライヤーのブンゼンバーナーと全く同様であり、きちんとして清掃と調整により、燃費が良くなるだけでなく能力が上がる。後に、ガスバーナーの基本的な燃焼能力の改善の際に大変参考になった知識だ。

ガソリンエンジンは電気がないと作動しない。キャブレターから空気とガソリンが混合してシリンダーに吸い込まれ圧縮された状態で、スパークプラグで着火しなくてはいけない。そのタイミングをコントロールし電気を供給するのはディストリビューターだ。当時のディストリビューター、スパークプラグの金属や、コンデンサーの品質がまだ良くなかったので、時々ギャップの間に溜まった汚れを紙ヤスリなどで清掃後、間隔調整し火花が最適な状態で発生する必要があった。同じような作動原理は厨房の熱機器のサーモスタットで使用しており、センサー内部の液体がグリドルやフライヤーの熱により膨張しその膨張度合いでサーモスタットの接点を開閉し、電気回路を開閉し温度調整をする。ガス機器も電気の開閉により燃焼をコントロールされるわけだ。その接点の構造は車のディストリビューターやスパークプラグと同様で時々汚れが付着し作動しなくなり、火がつかなくなると言うトラブルを起こす。その作動を理解しておれば、スパークプラグ用の紙ヤスリでちょっとこすったり、接点復活剤(カーボンなどの汚れ落とし)を吹きかけて簡単に直すことが可能だ。間隔調整は当時使用していたシェークをミックスするマルチミキサーの駆動部分のゴム製のプーリーの間隔調整で行う必要もあった。(ちなみに米国マクドナルドの創業者であるレイ・クロッック氏はマルチミキサーの元セールスマンをしており、それが縁でマクドナルドの創始者になれたのは有名な話だ。そのため、マルチミキサーはマクドナルドの3種の神器のように大事にされており、米国マクドナルド本社のハンバーガー大学の玄関やクロック博物館には金メッキしたマルチミキサーが置いてあることでもそれが伺われる。)

このように、車のメインテナンスの知識があれば、電気、ガス、水道を使用する設備機器や、厨房機器などの調整を行うことができ、機械が長持ちするだけでなく水道光熱費の大幅な削減が可能になるわけだ。調理器のメイテナンスに後込みする人でも、写真入りの懇切丁寧な車のわかりやすいメンテナンスの本を見てチャレンジしてみよう。思ったより簡単だという印象を持つはずだ。勿論最初は機械を壊したり修理代がよけいかかる場合もある、でも投資だと思ってしばらく続けてみよう。筆者も失敗はあまり言いたくないがずいぶん機械を壊し、お金を使って上司に嫌みを言われたものだ。(上司は決して怒らない、何故かというと怒る場合には自分で機械を修理できることを実証しなくてはいけないからだ)1年もすれば貴方の店の機械は新品の様によみがえるはずだ。

筆者が免許を取った時代の車はそんなメインテナンスをきちんとしないと必ず故障をするから、当時の車の運転は必然的にメインテナンスを必要とした。そんな経験と、ハンバーガー大学のAOCで機械の作動原理を習った筆者はおっかなびっくり初めての調理機器や、設備のメインテナンスを行いだしたが、機械の調子が良くなるだけでなく、水道光熱費が削減されるという成果を直ぐに見ることができるので、ポケットにはドライバーセットをさして厨房でしこしこメインテナンスをするという毎日だった。

そんな経験から女子スイングマネージャーのどうしようもないボーイフレンドに白羽の矢を立て、メインテナンスをやらせることにした。最初は責任感がないいい加減な奴なので心配していたのだが、思いがけもない効果が出たようだ。彼にとっては店長が一人でしこしこ楽しそうにやっている大事な調理機器のメイテナンスを任されたわけだし、店長の筆者と一緒に仕事をするチャンスが増えて、スイングマネージャーの彼女より店長に大事にされているように思い、プライドを持ち俄然とやる気を出しだした。そうなると筆者よりも車好きで専門の学校に行っているからその仕事ぶりは素晴らしい物があり、店舗の機械は何時もばりばりの新品の様に光り輝きだした。まだAOCを出ていないアシスタントマネージャーも彼の仕事ぶりをみて「お、すごいなー、今度どうやってメインテナンスをやるのか教えてくれよ!等と声をかける」すっかり自信がついた彼は、今までいくら言っても働かなかった、早朝や深夜のメインテナンスの仕事も自分から進んでやるようになった。当然、夜、アルバイトを誘って飲み歩く回数も減りモラルも大幅に向上した。

3)<<良い点を見いだしそれを伸ばすのが人材育成の基本>>

どんな人間でもよく見れば優れた点があるからその良い点を見いだし、チャンスを与えることにより、欠点や弱点も良くなると言うことを学ぶことができたわけだ。この手法は日本だけではなく筆者が後に米国に駐在したときに、やはり問題のあるアルバイトにも応用して大成功を治め事が出来た。人材育成は洋の東西を問わず同じであるという事だろう。

続く

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。

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