weekly Food104 Magazine 2006年3月29日号

メルマガバックナンバー

● 新店オープン情報
● 米国レストランNEWS
● 赤石貴麻の酒蔵探訪記
● 食ビジネスニュースリリース
● 王利彰のレストランチェック

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● 新店オープン情報 ———————————————-■□

■ 創作料理・鉄板Dining「赤坂 喜凛(きりん)」4/1 OPEN

東京・赤坂に創作料理・鉄板Dining「喜凛(きりん)」が4月1日(土)にオー
プンします。TBS旧社屋跡地の再開発で新たな発展を見せる赤坂に創作料理・
フレンチ・鉄板を織り交ぜた新しいレストランが誕生します。

階段を上がり、店内に入ると黒でまとめられた空間が広がります。デザインの
モチーフは「R」、つまり曲線。店内に並べられた丸いテーブルの周りには、
円筒状の赤いパーテーションで仕切られています。黒と赤、そして曲線という
色とカタチで、刺激的でありながら、落ち着いた空間にまとめられています。

料理は、ホテルのフレンチ出身の若手料理人が考案した創作料理と鉄板を使っ
た鉄板焼料理。和と洋の新鮮素材を用い、フレンチの手法をベースに調理した
前菜メニュー、高級食材を贅沢に使いながら、鉄板の醍醐味を存分に味わえる
鉄板焼メニュー、リゾットやパスタなど、ホテル仕込みの技が楽しめる食事メ
ニューと、オリジナリティーに溢れるメニューが揃います。

○メニュー(一例)
大根とフォアグラと鴨肉のミルフィーユ ・・・1,800円
鮮魚のロコモコ ・・・・・・・・・・・・・・1,500円
鮮魚の手まり寿司 ・・・ ・・・・・・・・・1,200円
季節の温野菜アンチョビクリームソース ・・・1,200円
半熟玉子とカニのオムレツ焼そば ・・・・・・1,000円
特撰サーロインステーキ ・・・・・・・・・・4,500円

○店舗データ
TEL:03-3584-4545
住所:東京都港区赤坂3-12-22竹下ビル2F
営業時間:17:00~24:00(L.O. 23:00)

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● 米国レストランNEWS———————————————■□

■ ユニークなエスニック

シカゴの北にあるインド人街をドライブしていると気がつくのは、殆どがイン
ドやパキスタン料理のお店ばかりだと言うことです。前から気にかかっていた
レストランがあり入ってみました。「中華インド料理」と書かれています。中
華風インド料理と言われると、カレー味の春巻きとか、サモサの中に中華具が
入ってるのかしらなどと単純に思い浮かぶものがあるのですが、メニューを見
るとそのようなメニューはありませんでした。

「満州風チキン」というメニューがありオーダーしてみましたが、カレー程強
いスパイスではありませんが、チキンをインドと中華のスパイスで煮込んであ
るもので、カレーでもなく中華でもない中華風インド・グレービーが決め手の
ようです。その他炒飯等、基本はインド料理で中華のスパイスを使ったメニュ
ーが多くありました。場所柄店内のお客様はすべてインド人でした。味的には
やはり、別別に食べたいという感じですが、インドやパキスタン人のための中
華料理という感じでしょうか。

また軽い夜食を摂るために朝の2時頃に24時間経営のメキシカン・レストラン
に入りました。テレビではスペイン語放送が流れ、ジュークボックスはラテン
の音楽しか入っていないという、ラテンの雰囲気抜群の所です。メニューには
普通のアメリカの朝食メニューもありましたが、一通りのメキシコ料理メニュ
ーの他に、イタリア料理もありました。メキシコ風イタリア料理です。種類は
それほどありませんが、パスタにソース、ミートボール等です。シカゴにはい
くつかメキシコ風イタリアンレストランというのもあるのですが、パスタのソ
ースにメキシコのスパイスを使ってるという感じですが、たまにこのような融
合したメニューを用意しているところはユニークで飽きません。

■ 高級ホテルが機内用の食事を提供

ブラッドオレンジとフェンネルの薄切りが添えられた、ピスタチオのクラスト
につつまれた本マグロ、プロシュート生ハムとモッツレラチーズが乗せられた
パン、ルッコラ添え、アボガドとチポトレ・アイヨリソース等、高級ホテルの
レストランではこのようなグルメなアントレーを提供していますね。ところが
最近、このような料理を飛行機に持ち込むようになってきているのです。

航空機燃料の高騰によるエアーライン会社の経営難により、各社は経費の削減
に懸命でその矛先が機内食に向けられ、機内食の殆どはファストフードのよう
な簡単な食事になってしまいました。ところが、高級レストランや高級ホテル
の食事に慣れた旅行者は貧しい食事に耐えることができません。そこで、各高
級ホテルが飛行機の機内食向けに持ち帰り料理セットを販売しだしたのです。

高級ホテルは高級志向の旅行者とホテルのリピーターであるビジネスマンにア
ピールしています。長い国内線のフライト用に、アメリカン航空、デルタ航空
等ほかの航空会社ではサンドイッチやスナック・ボックスを5ドルで機内販売
していますが、高級感あふれるペニンシュラホテル・ビバリー・ヒルズでは小
さいスーツケースのようなハンドル付きのボックスに、本マグロ、ポーチド・
サーモンとコブサラダのセットを20ドルで販売しています。

ニューヨークのホテル・プラザ・アテネではチキン・クラブサンドイッチやロ
ーストビーフサンドイッチが刺繍付きのナプキンと再使用可能な魔法瓶と一緒
に入っている「Goodies to Go」がオーダできます。ホテルでは単にホテルの
レストラン・メニューを持ち帰り用として提供している訳ではなく、常温でも
美味しくいただくことができるメニューを考えているということです。そのペ
ニンシュラホテルの「ペン・エア・ミール」は1週間で30食が出ておリ、その
売り上げはさらに伸びています。またアリゾナ州フェニックスのリッツ・カー
ルトンでは1週間で20食の「フライト・バイト」のオーダーを受けています。

もちろん航空会社は高級志向の顧客対応は怠っていません。エア・フランスで
はパリの老舗レストランのシェフ、マーティン氏のメニューを機内に登用した
り、ペニンシュラのシェフ・ハーディー氏が考案した食事はルフトハンザのビ
ジネスとファーストクラスのコースメニューに登場したり、国際線のフライト
にはマーケティングの策略の一環でいろいろなメニューの工夫をしています。

しかし、国内線はこのようなグルメ機内食を提供していないために、このよう
なホテル製高級ミールパッケージが登場しているのです。

(イリノイ州シカゴ在住 畑田ひろ子)

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● 赤石貴麻の酒蔵探訪記~日本の酒~——————————■□

■ バニラアイスにかけて美味しい日本酒(広島県・榎酒造株式会社(華鳩))

琥珀色した日本酒を、濃厚なバニラアイスにかける。酒とアイスの絡まり合っ
たところをスプーンですくって食べると、深く濃醇な味わいが口の中から鼻か
らいっぱいに広がった。この珍しいけど楽しい味わい方を教えてくださったの
は、榎真理子さん。榎酒造・榎徹社長の娘さんにあたる。

各試飲会でお目にかかる真理子さんは、いつも素敵に着物を着こなされていて
まさしく大和撫子といった感じであるが、4年前から蔵の仕事に携わるまでは
フランスで十数年に渡り、仕事経験を積んできたという。その国際的な経歴と
着物姿の、ともすれば正反対のイメージだが、海外にいらしたからこそわかる
日本のよさというのを感じ、引き出せているのではないかと思った。

さて、この琥珀色したお酒の正体は「貴醸酒」。昭和49年酒造年度、全国に先
駆け当蔵が最初に醸造し30数年その造りを守り続けている。通常の日本酒とは
製造方法が少々異なり、日本酒造りの三段仕込みの最後「留添」で、仕込水を
入れる代わりに純米酒を入れて仕込み、さらに年を重ね熟成させたお酒。

仕込み水の代わりに純米酒をいれることでコストもかかり、年を重ねることで
手間もかかるが、この貴醸酒には榎社長の夢とロマンが詰まっているという。
貴腐ワインやシェリー酒、マディラ酒、老酒のような濃醇な味わいと豊かさ、
香味が特長という、日本酒のイメージとは違うお酒であるが、中華料理、チー
ズ、うなぎ等、濃い味のお料理との相性はバツグン。冒頭のアイスにかけて楽
しむほか、ナッツ類やチョコレート、ドライフルーツのたっぷりはいったフル
ーツケーキなどと一緒に、デザートとして楽しめる。もちろん、貴醸酒をスト
レートや少し温めて味わったり、ナイトキャップとしてゆるりとしたひととき
を過ごすというのも。

日本酒の幅広い楽しみ方。是非一度お試しを。

○本年、初めて蔵開きを開催!酒と蔵とアートのコラボレーション!
【ゴールデンウィークは華鳩へ!】
「瀬戸の躑躅と蔵の夢」展覧会と蔵開き!
~アートにふれながらお酒をお楽しみ頂けます!~
会期:2006年4月30日~5月7日 AM11:00~PM18:00
会場:榎酒造特設会場 広島県呉市音戸町南隠渡2-1-15
入場無料(無料及び有料の試飲やおつまみもあります。)
(協賛及び出品詳細は下記に)

○本日お薦めの酒
【春、この時期だけの味わい、あらしばりと花見酒のご紹介(写真のお酒)】
・無垢之酒 純米吟醸無濾過生貯蔵(数量限定)
原料米:中生新千本 日本酒度:+2 アルコール度数:16.7度
・華鳩 花見酒 生貯蔵吟醸酒
原料米:八反錦 アルコール度数:14度
このラベルは当蔵のご近所さん、清水勝子さん手書きの絵。桜のきれいなラ
ベルが花見気分をそそります。

【当蔵メインブランド「貴醸酒」】
・貴醸酒 16年熟成大古酒
原料米:中生新千本
精米歩合:65% 日本酒度:-42.5度 アルコール度数:16.6%
週間モーニング連載「大使閣下の料理人」で紹介された後、あっという間に
完売。次回販売が待ち遠しい。
・貴醸酒 八年貯蔵亀甲瓶
原料米:中生新千本
精米歩合:65% 日本酒度:-44度 アルコール度数:16.6%
・貴醸酒 オーク樽貯蔵
原料米:中生新千本
精米歩合:65% 日本酒度:-48度 アルコール度数:17.3%
この他にも10年熟成や、低アルコールタイプ貴醸酒も。

○お問い合わせ先
〒737-1205
広島県呉市音戸町南隠渡2-1-15
TEL:0823-52-1234 FAX:0823-51-2238
E-Mail: enohato@muj.biglobe.ne.jp
URL: http://www5b.biglobe.ne.jp/~hanahato/

○著者撮影の写真
http://edit.photos.yahoo.co.jp/ph/tafdmail5/slideshow?.thema=11&.spd=n&.full=n&.dir=%
2F99ea&.src=ph&.view=t&.done=http%3A%2F%2Fphotos.yahoo.co.jp%2Fph%2Ftafdmail5%2Flst%3F%
26.dir%3D%2F99ea%26.src%3Dph%26.view%3Dt&submit=%A1%A1%C1%AA%C2%F2%A1%A1

○蔵開き出品及び協賛
出品:五子窯(備前窯変)・Natural Selection(オブジェ・絵画・パフォー
マンス)・青ノ木窯(備前陶器)・アトリエK(ガラス器)・泉窯(釉彩陶器)
・薔薇果(薔薇の花・薔薇石鹸・料理)
協賛:ファイアーサイド(薔薇果)・株式会社APEX・広島県加計生産組合・吉
川タオル株式会社・Hltsuji-Do
melimero( http://www.melimelo.jp/)

○食文化研究家 赤石貴麻(あかいし・たかお)
E-Mail:tafdmail5@yahoo.co.jp

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● 食ビジネスニュースリリース —————————-■□

■ 世界初・世界最小のジュール式家庭用豆腐製造器 リニューアル版を発売

福山化成株式会社は、家庭用豆腐製造器「とうふすていしょん」リニューアル
版を4月1日より発売します。

「とうふすていしょん」は業務用豆腐製造機で広く採用されているジュール熱
技術を用いコンパクト化。豆乳とにがりを混ぜスイッチを押すだけ。約12分で
本格手作り豆腐が出来る家庭用豆腐製造器。

○「とうふすていしょん」リニューアル版 画像
http://www.fkco.jp/ts2/index.html

○「とうふすていしょん」リニューアル版 商品概要
発売日  2006年4月1日
価格   希望小売価格 14,800円(税別) (15,540円:税込)
変更点  本体外観(蓋部分・内箱色・ロゴ他)
各種基盤回路の強化(信頼性のアップ)
本体重量 約1.4kg
本体寸法 幅23.5cm 高さ12cm 奥行18cm
製造容量 最大1.000g(豆腐約3丁)
付属品  攪拌用ヘラ・取扱説明書・おとうふレシピ
定格電流 AC100V 50/60Hzにて 7.5A
消費電力 AC100V 50/60Hzにて 750W
電気代  500gを作るときの電気代は約1.6円
材質   本体 ABS
中箱 POM
金属板 チタン(TP270C)JIS-1種
保証他  無償修理保証一年間 日本製
JQA総合製品安全認証取得、日米特許出願済

○関連HP:http://www.fkco.jp/shop/

■ 本場九州より呼子のイカを活かしたままお届け

有限会社 五常は、イカの活き造りで知られる、九州玄界灘で漁獲される活き
造りの本場とも言える、呼子のイカを特殊パックする事により、活きたまんま
で首都圏の料理店等に販売している。イカの性質上、九州から関東まで活魚運
搬車などを利用しても、到底活きの状態で届ける事は不可能とされていた。五
常は、この特殊パックとエアー便を使う事により可能とした。

また、地元漁師さんにおいても、漁獲はするが死んでしまう為に、冷凍イカと
なり商品価値が下がるために収入の減少に繋がっている。これらの問題を解決
する為に昨年より本格的に営業展開を開始した。

主に東京でのイカの活き造りと言えばスルメイカが主流とされている。プロの
料理人さんにも「肉厚・歯ごたえ・甘さ等どれをとっても、比べ物にならない」
とお墨付きも頂いているとの事。

○お問い合わせ先
担当者名:池田 憲明
TEL:0955-41-2141 FAX : 0955-41-2148
E-MAIL:gozyou@earth.ocn.ne.jp
所在地:佐賀県西松浦郡有田町原明甲2033-3

○関連HP: http://www.gozyou.com *3月末アップ予定

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● 王利彰のレストランチェック———————————–■□

■ マクドナルド50周年を記念の調理機器技術50年史 その15

日本マクドナルドの調理機器技術史 その1

過去14回ほど米国マクドナルドの調理機器技術50年史を連載しましたね。これ
から日本マクドナルドの調理機器技術の歴史を私の体験談を通じてご紹介しま
しょう。

大阪万博が開かれた70年代が日本でのファーストフードの夜明けでした。ケン
タッキーフライドチキン、ダンキンドーナツ、ミスタードーナツ、マクドナル
ド等が続々と日本に上陸。ファーストフードと同時にアメリカ製の機械が日本
に導入されたのです。

私はレストラン西武(現、西洋フードシステムズ)の米国ダンキンドーナツ社
と技術提携した日本ダンキンドーナツ部門で2年間勤務しました。まず、池袋
ISPと言うショッピングモールでのテスト店の店長を務め、その後、ダンキン
ドーナツが1号店を銀座に開いた時にドーナツマン(手作業でドーナツを作る
仕事)として開店作業に従事したことがあります。大変売れて、ドーナツのフ
ライヤーの温度の回復が間に合わなくなった経験があります。

当時は売上が高すぎるのが原因だと思っていたのですが、実は日本の当時の都
市ガスのカロリー、圧力が低い為、天然ガスを使用しているアメリカの仕様の
ままでは、売上の高いピーク時に必要な熱量が出なかったことが後でわかりま
したが、当時の厨房業者や私の知識では問題を解決することができなかったの
です。何故フライヤーの温度を保つことができないのだろうと言うちょっとし
た疑問が後に厨房機器開発の道に導いたのですが、そのときにはそのいばらの
道に迷い込むことを何も知らなかったのです。

ダンキンドーナツに2年ほど勤務、ダンキンドーナツ3号店の田無店の店長を1
年経験して、当時のレストラン西武の体質に満足できなくなり、外資系のハン
バーガーチェーンである日本マクドナルドに転職しました。日本ダンキンドー
ナツは技術提携をした純国産の会社ですが、日本マクドナルドは50:50の合弁
会社の外資系ですから、もっとシステム化している会社だと思って入ったのが
間違いでした。

歩行者天国に格好の良いハンバーガーとフレンチフライ、マックシェイクはピ
ッタリとはまり、各店舗の売上は異常に高かったのです。当時の単価でも歩行
者天国の日曜日には数百万円を売るような忙しさです。日曜日のピーク時には
まるでハンバーガーが空飛ぶ円盤のように空中を舞うような状態です。フレン
チフライを揚げるフライヤーは170℃と高温に保たれてないといけないのです
が、冷凍ポテトを連続して揚げ続けると、指を入れられるくらいに温度が下が
ってしまいます。奥行き900mm、幅1500mmのグリドルには冷凍パティが前面並
び、湯気がほわーっと昇りミートパティを焼くというより蒸すというような状
態でした。

当時日本は冷凍のパティで最初からスタートしたにもかかわらず、グリドルを
フレッシュミート用の温度リカバリーの遅いタイプを導入していたのです。
そのため、本来は綺麗に焼け焦げがつくのに蒸し上げるような状態になってし
まい、生焼けのハンバーガーを販売していました。当時はまだ危険な腸管出血
性大腸菌o-157が発生する前であり、お客様に生焼けのクレームを言われても
「本場のハンバーガーはミーディアムレアーで食べるのが当たり前ですよ」と
平気な顔で答えていたりした。今考えると恐ろしいですね。

このグリドルの問題が更に表面化するのは通常の2.5倍の大型のミートパティ
を導入する事になってからでした。フレッシュミート用の機器はサーモスタッ
トが温度が下がるのを感知するとガスバルブを徐々に開けていき負荷が最大に
なるとバルブの開度を大きくし供給ガス量を増やし、温度が戻っていくとガス
バルブを徐々に閉じていき、オーバーシュートしないようにしてあり、温度の
安定性は大変良いものでした。

しかし冷凍の熱負荷の高いミートを焼くには温度の回復が遅過ぎたのです。
さらに、温度センサーがグリドルの鉄板の下部に接触して取り付けられており
温度の感知も悪かったのです。

さて、店舗での調理機器の問題を体験した私は入社2年後にスーパーバイザー
と言う4~5店舗を管理する仕事に就くようになりました。スーパーバイザーの
大きな仕事は店舗のQSC(品質、サービス、クレンリネス)の維持と人物金の
管理です。QSCの管理のためには店舗を無予告抜き打ちで訪問し状態をチェッ
クする仕事があります。最初のうちは1時間ほどの簡単な店舗状態のチェック
でしたが、それでは店舗のレベルが向上しないということで、コンサルテーシ
ョンリポートと言う詳細なチェック方法が導入されました。このレポートの作
成に携わることが、私を調理機器開発と言う泥沼の戦いに導くことになったの
です。
(続く)

■ 韓国 食ツアー その4

ファミリーレストラン

韓国の外食市場規模は日本と同じ人口比と考えてもまだ、1/4の規模に過ぎま
せん。外食チェーンの成長過程を考えると、まず、ファストフードが発達し、
次にファミリーレストランの番です。

○現在の外食ランキング
順位 ブランド 会社名 03年売上(億ウォン) 03年店舗数 02年売上Ranking
1 Lotteria (株)Lotteria 5,000 890 1
2 BBQ (株)ジェナシス 3,800 1,550 2
3 Pizza Hut (株)Pizza Hut Korea 3,500 300 3
4 KFC (株)Doosan 2,500 208 5
5 Popeyes (株)TS HEMARO 1,301 210 6
6 Domino Pizza (株)DPKインタナショナル 1,100 218 8
7 Mister Pizza (株)韓国ミスターピザ 1,000 185
8 Outbacksteak (株)AUSSIE CHUNG 920 33
9 Burger King (株)Doosan 825 108 7
10 Beniguns (株)ライズオン 760 19

上位10社のうち8社が国外との提携ないし合弁企業ですが、そのほとんどがフ
ァストフードでファミリーレストランはアウトバックステーキハウスとベニガ
ンズの2社に過ぎません。

では、ファミリーレストランのカテゴリーでの企業別順位を見てみると
以下のようになります。*2003~2005年の売上(億ウォン)

ブランド名 会社名      2003年 2004年  2005年末推定
Outbacksteak (株)AUSSIECHUNG    920    1,600      2,300
T.G.I.F (株)Food Star 800 1,000 1,200
Bennigan’s (株)ライズオン 760 826 1,000
Vip’s (株)CJフードヴィル 550 710 1,200
Marche (株)Amoje 400 300 300
Sizzler (株)バロンズインタナショナル 140 180 207
TonyRoma’s (株)Sun@food 142 180 203
Kahunavill (株)SavoyF&B 34.3 38 53
計 3,746.3 4,834 6,463

(上記外食企業のランキング資料は立教大学ビジネスデザイン研究科卒、現立
教大学経営大学院博士課程後期在籍中の李美花氏2005年度調査研究より引用さ
せていただきました。)

1位がアウトバック・ステーキハウス、2位がTGIフライデー、3位がベニガンと
上位3社は米国系のカジュアル・レストランが占拠しています。日本からはコ
コスが韓国の展開権を元に地元企業と提携して早くから展開していましたが、
すでに撤退をしています。米国からはデニーズが進出しましたが既に撤退しま
した。日本からはその他すかいらーくが財閥企業のCJ社と技術提携してFC展開
をし、現在は13店舗ですがあまり元気はないような印象です。

どうも韓国ではデニーズやすかいらーくなどのファミリーレストラン形態は成
功していないようです。そこで、今回はアウトバック・ステーキハウスやベニ
ガンズとすかいらーくを比較してみました。

でも、読者の皆さんはファミリーレストランのジャンルに米国のカジュアルレ
ストランが入っているのはおかしく思われるでしょう。実は韓国の食形態が米
国や日本とは大きく異なっています。米国のファミリーレストランは酒類販売
許可を取っていないので、アルコールを置いていません。カジュアルレストラ
ンは酒類販売許可(リカーライセンス)をとっているのでアルコールの販売が
可能で、その比率が日本の居酒屋ほどではありませんが、結構高いのが特徴で
す。そのため、米国ではアルコールを置いていないファミリーレストランとア
ルコール販売をするカジュアルレストランのカテゴリーは異なっているのです。

ところが韓国では食生活がちょっと異なります。食事をするときにはあまりお
酒を飲まずに、食後にお酒を提供するバーなどに行くのです。昔の日本のスタ
イルですね。そのためカジュアルレストランでのお酒の販売比率がほとんどな
くファミリーレストランとカジュアルレストランの区別がほとんどないのが現
状です。

また、韓国人の方の大学進学率は日本の50%に対して82%と大変高く、また米国
への留学生が多いのです。その結果、米国文化へ馴染んでおり、格好の良いカ
ジュアルレストランの方が、ダサいファミリーレストランよりも好まれるので
す。

3つ目の理由は嗜好性の違いです。韓国人の焼肉好きは皆さんご存知と思いま
すが、肉に対する嗜好性が大変高いのです。韓国は牛肉よりも豚肉を好み、そ
の豚肉でも骨付きのリブが大好きで、米国のトニーローマのようなベイビーバ
ックリブに人気があります。

ファミリーレストランではもう少し低価格の料理しか出さないのですが、アウ
トバックやTGIフライデーズ、ベニガンなどはベイビーバックリブを提供して
いたので、それらのカジュアルレストランをファミリーレストランとして使い
出したのです。

さて、先回と今回の韓国出張でアウトバック、ベニガン、すかいらーくのラン
チの価格とサービスを比較してみました。アウトバックとベニガンのランチの
メニューは良く似ています。メイン料理一つにサラダまたはスープ、ソフトド
リンク、パンのセットで1,200円から1,800円の幅です。顧客は女性客も多く、
肉料理をパクパク食べているのが印象的です。

米国ではベニガンはもう元気がないのですが、韓国のベニガンはなかなか健闘
しており、今回印象に残ったのはサービスレベルの高さです。従業員は笑みを
絶やさないし、注文を受けるときには膝をついて客の目線で注文を受けます。
これはTGIもアウトバックも同様です。

サービスの特徴でもう1つ特筆しなければならないのは、バレット・パーキング
です。都心でも必ず駐車場が必要なファミリーレストランでは狭い駐車場を有
効活用にするために、必ず、係員が車を預かってくれます。日本ではグローバ
ルダイニングが行いますが余り一般的ではありませんね。でも、運転の下手な
女性には評判がよいし、カップルで乗りつけたときに格好が良いではありませ
んか。

もちろん料理のボリュームもたっぷりです。ベイビーバックリブもチキンサラ
ダも米国と同様のボリュームで値段は高いですが、満足感も高く感じます。
さて、ファミリーレストランで首位のアウトバックステーキハウスですが、日
本と韓国にほとんど同じ時期に進出したのに現在は日本10店舗、韓国は70店舗
と大きな差がついています。以前、日本の責任者であったジョエル・シルバー
スタイン氏に日本と韓国を比較してもらったことがあります。シルバースタイ
ン氏は「韓国における20~40才台の働き盛りの人が日本と比較にならないくら
い元気だ。そのため開店コストは日本の70%と低いにもかかわらず1店舗あたり
の売上げは日本よりも5割高く、収益性は比較にならない」と言っていました。

もう一つは成功した上位3社は携帯電話会社との割引タイアップを積極的に行
ったり、韓国人向けのメニュー開発を行うなど現地化を真剣に行ったのです。
現地化という意味では韓国の立地は米国と日本とは異なります。日本の東京首
都圏(東京テレビエリア)には全人口の35%の人が居住していますが、韓国の
首都圏(ソウル・京畿道)には全人口の46%もの人が居住しているように人口
集中度が高いのです。日本ではファストフードは繁華街から集中出店して言っ
たのに対し、すかいらーくやロイヤル、デニーズは郊外へのドーナツ化現象を
利用していち早く出店をして成功しました。米国のアウトバックは郊外の安い
立地で成功したのですが、韓国の首都圏への人口集中を元に日本のファストフ
ードのような繁華街集中出店で大成功したのです。

さて、比較をするために江南にある古いすかいらーくに行ってきました。韓国
すかいらーくは日本との技術提携でFCの位置づけになり、現在13店舗韓国に展
開しています。この店舗は都心立地ですが、駐車場があります。しかし、上位
3社のようなバレット・パーキングなどのきめの細かいサービスは行っていない
し、駐車場も汚れいてます。店舗に入るミニマムの内装デザインの寂れたがら
んとした空間が広がっています。従業員にも笑顔が見えません。着席しメニュ
ーを見るとランチにはリブなどはありません。日本のようにハンバーグステー
キやとんかつなどのセットメニューです。価格は上位3社の1/2程度とリーズナ
ブルです。

さて、料理はハンバーグとパスタグラタンのランチセット、サラダかスープ、
パンのセットが選べて700円ほどと大変リーズナブルです。そこでスープセッ
トを注文し、その他、チーズピザととんかつ、サラダを頼みました。セットの
スープはマッシュルームのポタージュスープで、昔のすかいらーくの味です。
ハンバーグのソースも昔のガーリックソースで、威勢の良かった頃のすかいら
ーくを思い出しました。

しかし、昼時をやや過ぎていたせいもあるのでしょうが、客席には空席も目立
ち、お客様も食事をするよりもドリンクとデザートで会話を楽しんでいる人が
多かったようです。

この3社を比較してわかったのは韓国におけるファミリーレストランのアウト
バックやベニガン、TGIフライデーが格好良いということでした。日本のファ
ミリーレストランも低価格だけでなく格好のよさにもう一度目覚めることが必
要なのではないでしょうか?

○アウトバック・ステーキハウス
http://www.skylark.co.kr/
○ベニガン
http://www.bennigans.com/Korea.htm
○すかいらーく
http://www.skylark.co.kr/

今回の韓国視察コーディネートと資料提供をしていただいた、立教大学経営大
学院博士課程後期在籍(正式には2006年4月より)の李美花氏の執筆した2005
年度立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士卒論(調査研究)「韓国にお
ける多国籍外食企業の進出と戦略に関する調査」の要約は今後飲食店経営に掲
載しますのでご参考下さい。また、卒論は100Pを超える詳細な韓国外食マーケ
ットの市場規模と、10社を超える進出企業のインタビューを通じて成功と失敗
の要因を述べております。
*全文をご希望の方は有料で配布をしておりますので、王 oh@sako.co.jp
までお申し込み下さい。
(韓国編終わり)

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