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■ Shimojo ニューヨーク・ニュースその2 ウェグマンズ・フードマーケット
ウェグマンズとホールフーズは、消費者団体が発行し、非常に権威があるコン
シュマー・レポート誌(Consumer Reports)でも全米トップのスーパーマーケ
ットとして高い評価を得ています。更に同誌では、南部フロリダ州を中心にチ
ェーン展開するパブリックス、西部を中心に展開するラリーズ、又、筆者の視
察にもしばしば組み入れるワシントンから南のハリスティーターも高い評価に
なっています。
先に述べたトレーダー・ジョーズも非常に良く健闘しており、評価点ではウェ
グマンズと共に最高点を得ています。これらの食品スーパーは、ニューヨーク
だけでなく他の都市にもあるので視察された方も多い事と思います。ここニュ
ーヨークとアメリカの首都ワシントンでは、これらを同じ地域で並べて比較す
る亊が出来ます。
○ウェグマンズ・フードマーケット
ウェグマンズは元々、1915年にニューヨーク州中部に位置するロチェスターと
いう小都市で、Walter とJohn のウェグマン兄弟が家業である食品店で働き始
めた事から始まり、現在71店舗のチェーンで全米でもトップクラスのパフォ
ーマンスを持つ総合食品スーパーに発展しました。ウェグマンズは食品店の中
でも、初期からこだわりが非常に強い商店であり、今で言うところのグルメス
トアーの走りと言えましょう。
旗艦店の右側が通常の「食品総合スーパー」部分、中央より左側の「マーケッ
トカフェ」は店内で売られる惣菜を含む食品等を、その場で食べるためのイー
トインコーナーです。従来の様に店内の片隅に小さく設置されたテーブル席で
はなく、広くてユッタリと食事をするスペースが取られていて、これがウェグ
マンズをトップに至らしめた顔と言っても良い部分です。その左側には「テイ
スティングスというフルサービスのレストラン」があります。一部はオープン
キッチンになっていて、シェフが調理する様子も見えます。
ウェグマンズの企業としての発展では、関連企業を吸収合併させると同時に、
インストアー・ベーカリーの導入、初の冷凍食品導入等次々とアイデアを出し
それらを率先して採用していきました。1930年には、300席のカフェテリア付
きで、売り場面積約2000平米のマーケットを開き、それは当時「ショー・プレ
イス」と呼ばれましたが、今だったらスーパーマーケットのプロトタイプ、又
はフューチャーストアと言われる様な、現在のスーパーマーケットの前身をオ
ープンさせた事になります。
その後1931年に株式会社になり、翌32年の世界恐慌の最中には、地域最初の冷
蔵ショーケースと葉物野菜への自動霧吹き装置等を採用しています。1940年に
当時は「フロステッド」と呼んだ、現在の冷凍食品「フローズン」の販売を手
掛け、その後も地域初のセルフサービスを導入し、常に新しいものを提案して
顧客を感心させ満足させて来ました。1968年には、同じくニューヨーク州中部
の小都市シラキュースへ進出させました。
その後も新しいアイデアであるファーマシー(調剤薬局)をインストアーに採
用し、通常の薬品(ドラッグ)販売のみから発展させ、注文した処方箋薬品が
出来上がるまでに食品の買い物が済ませられる、今でいえば当たり前のことで
すが、これもウェグマンズが地域で一番初めに採用しました。バーコードをレ
ーザーで読み取る支払い(キャッシャー)システムもウェグマンズが地域初で
した。
アメリカで頻繁に使われる企業PRの一つに、経済雑誌フォーチューンの「従業
員が選ぶ、自分の会社に誇りを持っていて、この会社で働いていて幸せだ」と
いう調査では、過去数年連続して全米のトップ10に入っており、2005年は1位
になりました。これはアメリカでは最高のPRになり得る亊です。もう一つのPR
は、寄付などを含む地元への貢献があり、それもウェグマンズは上手に使って
います。
1993年には初めてニューヨーク州外へ進出し、その1店舗目はペンシルバニア
州イリーで、そして99年に初めてのニューヨーク市圏であるプリンストン店を
ニュージャージー州に出店しました。続いて翌年にはニュージャージー州ブリ
ッジウォーターに2店舗目、その南側のマナラパンのニュージャージー州3店舗
目、更にニューヨーク市に一番近いロケーションであるウッドブリッジ店は
2003年11月9日にオープンしました。ニュージャージー州の南部では、5店舗目
のオーシャン店に続き06年3月にマウントローレル店が、6月にはチェリーヒル
店がオープンしこれがニューヨーク近郊の最新店となります。
ニューヨーク市の通勤圏としては、ウッドブリッジ、プリンストン、ブリッジ
ウォーターの3ロケーションと言えます。最近開店させているほとんどのロケ
ーションで、買った惣菜などをその場で食べる事が出来る様、ダイニングエリ
ア「Market Cafe」が用意されています。筆者の視察プログラムで使うニュー
ジャージー州やワシントン地域の店舗も1万平米などの広い売場面積を使いそ
ういう売場構成になっています。
ウェグマンズの最大の特徴がここで見て取れます。コーヒー/カプチーノコー
ナー、焼き立てピザとチキンウイングのコーナー、寿司の実演販売コーナー、
自分の好きな物を自分で好きなだけテイクアウト容器に取る、サラダバー/中
華料理コーナーも充実しています。これはフードバーに展示の食品全てが均一
料金になっていて、1ポンド(重さの単位)当たり幾らかという方法で支払い
ます。手作りサンドイッチとスープのコーナーもあり、ランチセットでは半分
サイズのサンドイッチとスープのセットなどもあります。
このコーナーは付近で働く人達や車で移動中のワーカーのランチ、勿論普通の
買物客に大変重宝なものになっています。このマーケットカフェは、それらの
コーナーで選んだランチやスナックメニューをその場で食べる為のスペースで
す。従ってウェグマンズの早朝や昼のピークは、通常のスーパーマーケットの
常識を大きく超えています。勿論、夕方の仕事帰りに立寄り、これを晩ご飯の
おかずの一部に使うなどにも大変な人気です。
更にウェグマンズでは生鮮、惣菜テイクアウト/イートイン、加工食品、半調
理品、焼きパン/ケーキ・コーナー等に特に力を入れています。この部分は日
本のデパ地下に近いものを想像下さい。又、この部分がスーパーマーケットで
ご馳走を買って家庭の味に近い物を家で楽しむという、ウェグマンズをトップ
にしたもう一つの顔です。その他のグロサリー食品、日用雑貨品、ブックコー
ナー、ガーデン用品季節商品の品揃え、カスタマーサービス、スタッフ教育、
インテリア等も含めスーパーマーケットの最高レベルと言われています。
通常スーパーマーケットでは3万5千から4万品目を扱うと言われていますが、
最近の顧客の志向に合わせて扱い品目は増える傾向にあり、ウェグマンズでは
少ない時でも6万品目以上を扱っているそうです。私はグルメストアーや市内
のスペシャルティーストアー以外で、キノコの王様といわれるトリュフを見た
のは、このウェグマンズが初めてだと記憶します。それを買う客がここには居
るということです。
私達が「グルメストア」と呼ぶ判断材料にチーズの扱い品目数を使います。数
年前までは250種類前後を扱う店と考えていましたが最近は300種類を扱うスー
パーマーケットが多く現われ、従って350種類を越えないと特別なものと思え
なくなってきました。ウェグマンズでは700種類以上のチーズを扱い、これは
おそらくニューヨーク商圏で最大のチーズショップと言えると思います。又、
一般のスーパーマーケットとの差別化の一つには、以前にSNYニュースで特集
した牛肉売場の「乾燥熟成(ドライエイジ)牛肉」などがあります。
ウェグマンズ・ショッパーズクラブという割引き制度等が利用できるセービン
グプログラム(FSP)があって、店頭でこれに無料登録し、クラブカードを使
うと割引きになる商品も店内に多数揃えてあり、また、小切手の現金化や特集
ニュースやレシピーなどのDMを受け取ることが出来ます。商品によっては20%
以上の割引きになる場合もあり、競合他店の同様のクラブ制度に比べても非常
に充実してる様に思います。
またこれは当然顧客管理等にも使われているはずです。商品の価格を単純に比
較した場合、当然ですが他店に比べて全般的に決して安くなく、低価格のスー
パーは他にいくらでもあります。PB商品を使った低価格のセールを上手に使っ
て、非常に魅力的なチラシを作っています。これは日本と同様に新聞折り込み
にも入り店頭にも置かれています。
最近ではe-mailを使ったメンバーへの配付も行なわれます。例えば、パスタ1
箱が34¢、コーンやインゲンの缶詰めが25¢、大手ブランドのコーラなどのソ
ーダ製品(350CC缶)が5ダースで$10.等で、これはウォルマート等と比較し
ても群を抜いての低価格です。しかしウェグマンズでは、他店には無い豊富な
品揃えと新鮮さ、アトラクティブで明るく楽しい店内ディスプレイ、競合他店
では非常に種類が少ないインターナショナル食品コーナー等でも客を集めます。
日本のコーナーでは蕎麦、うどん、ラーメン、味噌汁の素、各種調味料、菓子
類等を扱い、日系を除く当地のスーパーマーケットの日本コーナーとしては、
非常に充実しています。インターナショナルにはこの他、スペイン系コーナー、
ユダヤ系コーナー、中華コーナー等があります。
現在の日本では競争力の一番重要な部分が低価格になっている様ですが、アメ
リカ人の一部がケチでシビアな事に変わりはないものの、アメリカでは価格以
外の競争も非常に大きな部分を占めていることは確かな様です。ニューヨーク
では食品スーパー(正式には生鮮食品店)として非常に有名な「スチュー・レ
オナード」がありますが、そちらは扱い品目を絞って、扱う食品の多くはホー
ムメイドの半調理や調理済み商品であり、私はこれを全く別のものとして、両
方に興味を持ちます。
ウェグマンズの2006年の年間売上は$4.1ビリオンに上がり、それは全米スー
パーの32位となります。本拠地ロチェスターではテイスティングスというレス
トランを併設し、ここのユニークさは、全て店内で売っている商品を使って調
理をしていることから、同じものを家庭で作ることが出来ますという提案にも
なっています。これはウェグマンズのスローガンである「Take it, Make it」
すなわち「お持ち帰り下さい、調理して下さい」という亊で、出来上がった惣
菜を持ち帰るか、材料を買って帰り家で調理する亊に関連してきます。
このレストランの食事ではビックリしたことがありました。筆者がテイスティ
ングで「ポークのロースト、パンプキンソース」を注文した時に、焼き加減を
聞かれました。牛肉なら当然の事ですが、豚肉を生焼け状態で提供する亊は通
常考えられないものの、興味もありミディアム(半生焼き)とお願いしました。
まさか半調理(生肉)の状態で出すとは思っていませんが、そのまさかの中心
部分がピンク色で出て来ました。担当のウエイトレスに生で大丈夫なのかと尋
ねたら、シェフの説明は「抗生物質やホルモンを使わない無菌豚を使っていま
す、これは店内のどの部分で売られている商品です」との亊でした。日本では
アメリカ産スミスフィールド等の無菌豚が出回っていて半生で食べた経験があ
りますが、アメリカでは初めての経験であると共に、それだけの知識とある意
味での経験を持ったシェフの説明には感心したものでした。(勿論美味しかっ
たです)
実はこのフラッグシップ店ではニュージャージー州やバージニア州で展開して
いる最新で最高レベルの店作りの実験が行われています。青果売場の一角には
ベジ・バーというサラダをその場で作って食べさせてくれるコーナーを作り、
精肉・鮮魚のコーナーでは各々グリルバー・コーナーで肉料理を、シーフード
バーでは魚料理を客の前で調理して食べられるカウンターが設置されています。
又、2007年10月に完成したものですが、ファーマシーの隣にある自然食品売場
の一角には「ティー・サロン」が設置されました。伊藤園の協力を得て、日本
茶を飲ませて売る為のコーナーです。ここでは何でも客に提案して体験させる
亊から始まるのです。
高級スーパーであれば金持ちをターゲットにすると思いがちですが、ロチェス
ター市の人口は約20万人強で、周辺の郊外を含めた都市圏でも100万人程度で
す。その中に20店舗以上を持つという亊は金持ちばかりがターゲットにはなり
得ません。事実、ロチェスター市の一家族あたりの平均収入は約$3万1千です
から、全米の平均に比べても低いレベルにあります。
ウェグマンズの古い店舗の中には、天井が低い店で古いゴンドラを使いその上
には商品在庫が積み上げられ、高収入とは思えない大きな人達も買物している
店もありましたが、それらも全て明確にウェグマンズでした。ウェグマンズで
はその街の中も裏も全て知り尽くした本拠地ロチェスターとその周辺を使って
地域に合わせた店作りをすると同時に、ニューヨーク市周辺やワシントン周辺
等その他の地域ではどんな亊が可能か、試行錯誤もしながら店舗を運営し全米
トップになっているのです。
ロチェスターの多くの住民は、ウェグマンズに関わっているか家族や知人がウ
ェグマンズに関わっているのでしょう。役に立つ情報や反応がどんどん本部に
は入ってくるのです。この企業は非常に綿密な計算をした上で、儲かる様に店
舗が運営されている事がわかります。
○ウェグマンズ・フェアファックス店
ワシントン郊外のフェアファックス店は2007年秋に開店しました。ここでは本
拠地ロチェスターにある旗艦店で実験されていることの一部が行なわれていま
す。店舗は1階の売場と、ウェグマンズ・カフェ(テーブル席)、オフィス等
に使われる2階部分、そして地階にあるワインショップの3層になっています。
テーブル席は2階だけでなく、1階と地階の入口付近にもソファーとテーブルが
設置されるなど、その部分を見るとスーパーマーケットというよりもホテルの
ロビーの様にも感じられるレベルのものです。
フラッグシップ店同様、鮮魚売場の前に島が作られシーフードバーと呼ばれる
客の前で調理するコーナーやアジア料理を提供するエジアン・バーも作られて
います。ティーサロンは旗艦店より小さめですが、その場で日本茶が試飲でき
るコーナーにしてあります。
ニューヨークでは州の法律によって、スーパーやコンビニを含む食品店内では
ビール以上のアルコールを売る亊が出来ません。主にビールを売る為のライセ
ンスで、ビア・ライセンスを持てば扱えるわけです。アルコール分を減らした
ワインなどはビールと同じ扱いになりますが、それ以上のアルコール含有率の
酒類は、リカーライセンスを持った酒屋で買う亊になります。しかし近年はそ
のリカーライセンスの取得が厳しく、相当の時間と費用が掛かるようになって
います。したがってウェグマンズの本拠地であるロチェスターでもワインコー
ナーは併設されません。酒販店は食品店と出入り口を別に設置しなければいけ
ません。
これは未成年者がアルコール類を入手し難いシステムにしているという亊です。
ある意味では、ビールは大目に見られているのでしょう。ニュージャージー州
やバージニア州の法律では、ライセンスを取れば食品店でリカーを売る亊が出
来、ウェグマンズ・フェアファックス店の地下もその酒販コーナーになってい
ます。
ニュージャージー州の一部のウェグマンズも酒販コーナーがついていてこれは
仲々迫力があります。スーパーマーケットの中の酒販コーナーでありながら、
マンハッタンにある一流のワインショップと並ぶほどの品揃えになっています。
名前と値段だけでそのグレードは判断してはいけませんが、例えばボルードー
ワインでは、シャトー・マルゴー、シャトー・ムートン、シャトー・ラフィッ
ト・ロートシルト等も扱われ、1本$数千の商品も並びます。ハイレベルの酒
販店ではよく見られる亊ですが、ここでも相当の知識を持ったセールスが販売
に当たります。勿論、人気商品のオーパス1や日本酒もあり、その他の海外か
らの銘酒も並びます。
ウェグマンズ全店に言えることですが、店内のあちこちで試食コーナーを作り
そこでは商品を紹介するという本来の試食が行なわれています。日本でよく見
られる、パート販売員のしつこい押し付けは一切無く、日本のスーパーの方が
ウェグマンズの試食コーナーを見ると日米の差に驚かされます。時には大きな
帽子をかぶったシェフ(料理長)が試食コーナーや売場の対面販売部分に出て
来て商品についての質問にも調理方法にも丁寧に対応します。試食コーナーだ
けでなく、ウェグマンズの従業員は客との接点を常に探し、いつどこでどのお
客に声を掛けようか、そんな努力が伺えます。それが人事教育とカスタマーサ
ービスに結び付いているのです。
(続く)
ニューヨークとその周辺の食品小売業界、飲食に関する情報、そしてそれを駆
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チャーリー・下城近雄(NY在住、流通コンサルタント)
E-mail:shimojoNY@earthlink.net
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