2008.03.05号
Vol. 41ニューヨークと周辺地域における食品小売業と消費者意識の現状
■Shimojo ニューヨーク・ニュース その1

2007年は、食品に関わるスキャンダルが多発した年でした。脱却の2008年と思
っていた矢先にそれに輪を掛ける様に中国製冷凍餃子などの食品問題が起こり
ました。アメリカではそうなる前に既に対処していた食品スーパーもあり注目
されています。今回は食の安全にも関わる、アメリカの飲食と食品に関するニ
ュースをお伝えしましょう。

■ ニューヨークと周辺地域における食品小売業と消費者意識の現状

海外から日本の小売業界と消費者の動向を見ていると、小売業界内の企業競争
だけではなく、売る側と買う側の双方が異常な程の神経質さで何かの競い合い
をし、最終的には双方が苦しんだり迷惑を被ったりする状況に見えます。それ
に対し、アメリカの消費者はそういう亊にあまり拘らない亊を以前の書き物で
もお知らせしました。これはイチゴやポテト等パック詰めで売られる食品の中
で、その一部が傷んでいても当地ではほとんど問題にする人は居らず、むしろ
それを取り除く為の無駄な人件費や商品ロスの為のコスト上昇を懸念する為等
です。

小売業界内の価格やサービスの競争は当然あるべき事ですが、それが行き過ぎ
ると最低限確保しなければいけない利益まで削ってしまい、その対策の一部と
して日付や産地等々の偽装や安全を無視したコストダウンにも発展してしまう
のでしょう。そして消費者の反応と動向がこれを大きく助長している様に感じ
ます。継続的な偽装などでは、ごく一部の場合企業のトップが知らない間に行
なわれている場合もあります。しかしほとんどの場合はトップが承知した上で
行なわれているか、場合によってはトップ自らが指示しているはずです。

どの企業が何をしたというリストは、筆者のクライアントも一部入ってくるか
も知れないので書き上げません。発覚したものでは、消費者よりも先にメディ
アが矢面に立ってその企業を責め、昼のワイドショー等でもその専門知識もな
いタレントなどが面白おかしく時には誇張してその話題を広めます。その都度
似た様な営業停止処分や謝罪や改善策が行なわれます。それが高じて時には自
殺者も出るのが現状です。

次々と同じ亊の繰り返しで、これを追及し始めると止めどもなく毎日何処かで
何かが出て来るのかも知れません。これは真実を報道する筈のメディアの一部
も誇大に執拗に報道する現状と、それに乗せられて大騒ぎする消費者側にも原
因があります。BSE騒動の時が良い例でした。小売業の場合は売れない亊には
ビジネスになりませんが、報道は視聴率(や売上げ)などを延ばす亊を目的に
面白く作り、視聴者を喜ばすものではいけません。最近の大問題は中国製食品
で、国民性の違いもあるので、この現状を知れば知る程怖いものがあります。

本文でも触れますが、アメリカで好評なスーパーマーケット・チェーンの一つ
トレーダージョーズでは、2007年10月頃から既にオーガニックを含む中国製食
品の安全性に不安を感じていて、その他の国からの商品に切り替えている、と
のニュースがありました。その時期と言えば、昨今日本で問題となっている中
国製冷凍餃子が製造され、一部の異常商品の報告があった頃に当たります。被
害が発覚したのは年末頃からで、週末と年末が重なり全く対応が遅れました。
しかし大問題として発覚し消費者が知ったのは、1月末になってからでした。

後で述べますが、アメリカでは自身にも関わってくる危険なものに対しての反
応と行動は非常に早く、食品リコールは素早く大々的に行なわれます。アメリ
カではトレーダージョーズ等、実際に中国製品の排除という行動をした企業が
あるという亊は、既にそういう亊を含めた情報がアメリカの企業には伝わって
いて、万一のリスクを避ける為にその商品を排除するという行動を取ったわけ
です。一例では、筆者の記憶でも以前トレーダージョーズには中国製の冷凍餃
子数種類が売られ実際に購入していましたが、10月より前の時点で販売中止に
なっていたもので餃子好きの筆者は不便を感じていました。代替え品として、
最近はタイ製、又はアメリカ製の餃子が扱われる様になっています。

世界中何処へ行っても食の安全は重要な亊に違いありませんが、戦争や飢餓と
は無縁で平和な現在の日本の消費者にとってこれは大問題なのです。我々は上
に述べた様にメディアや廻りの世論に振り回されるのではなく、企業が率先し
て作り出す、安全で美味しいものを適正な価格で食べられる様にならなければ
いけません。筆者も日本へ出張する毎に物価が低くなる亊を実感しますが、こ
れも安い輸入製品や海外依存が作用しています。

中国製品に関する現在のアメリカの世論では、むしろ食品以外の中国製商品に
関した亊で懸念するものがあります。玩具や子供服に使われた素材の問題、又
医薬品、チューブ入り歯磨き、ペットフードには制限又は禁止された薬品・農
薬などが使われていたり、食器や塗料などに鉛等残留性の毒物が含有されたり
と、生活に関わる多くのものに広がっています。 

そのほとんどは故意や無配慮によるものです。ペットフードの問題では多くの
ペットが死んでいます。更に一部は政府が承知又は黙認の上で行なわれている
ものとの報道もあります。安全性に関する認識や生活基準等が低レベルで、そ
れを上げようとする考え以上に金儲けが優先しているのでしょう。その以前に
商品が出来上がっていて売れればそれで良いという考えがあるのかも知れませ
ん。今はあまり使われない言葉かも知れませんが、「安かろう、悪かろう」で
ありそれを我々は買わされているのです。これでは手洗いや作業着等の衛生面
という最低レベルの亊は守られているのか、大きな疑問となります。 

では、アメリカの消費者意識の現状が素晴らしいかと言うと勿論そういうわけ
ではありません。メディアに踊らされている消費者も沢山居るのも事実です。
ただ色々な面でクール(冷静)な人が多いのも事実です。2月2日発行のニュー
ヨークタイムズ紙では、日本で起こった中国製冷凍餃子への農薬混入というニ
ュースが載っていて、その種の記事を読んだ一部の当地の消費者は神経質にな
っています。その文面では、日本では大きなスキャンダルで国を挙げてのパニ
ックになっているという種類の書き方でした。それは事実でしょうが、前に述
べた通り、アメリカでも中国製品や食品の安全性に関する不安は以前からある
もので、現実にこちらで起こった食中毒ではないので消費者の反応はマイナー
なものでした。

又、これもニューヨークタイムズが載せたものですが、最近マグロの水銀残留
濃度が高いから注意する様にとのニュースがあり、これは相当の消費者が気に
していた様です。一部の人が非常に神経質になるものの、実害もないのでパニ
ックには勿論なりません。消費者の話題に上がっていたのは、ニュースが報道
された1〜2週間だけのことでした。例えば、当地のアメリカ人が寿司レストラ
ンへ行ってにぎり寿司セットを注文するもののマグロ抜きで作って欲しい等が
ありました。しかし、どうやらアメリカの消費者は自分達にとって大きな脅威
にならないとすぐに忘れ去ってしまう様で、1ヶ月も経たないうちにこの状況
は既に皆無となりました。これは筆者自身がニューヨークに日本レストランを
持っていて、マグロを買う(寿司などを食べる)現地の消費者と直に接してい
るのでこの上なく正確な状況と考えます。

日本に輸入されたアメリカ産牛肉に輸入制限部位が混ざってしまう事に対して
日本が輸出側に対し強行に善処を依頼して、それを反映したハッキリとした行
動もないままに終わっていくのも、アメリカの悪い気質かも知れません。正確
に言えば、非常に大きな量を扱っている為に見落としが起こってしまうのが一
つと、アメリカ人の現状からすると大きな問題ではないもの、と考えているか
らでしょう。事実、BSE関連の病気はアメリカでは起こってなく、ごく僅かの
ヨーロッパ旅行中に感染したであろう患者がいるだけで、死者もありません。
ステーキレストランは継続的に大流行りで、それも骨付きのリブやTボーンス
テーキに人気があります。

以前のニュースに書きましたが、筆者が実体験した大手ミートパッカー、T社
から届いた牛肉ブロックに異物混入があった亊については、この企業のトップ
や地域事務所の責任者自身が承知しているにも関わらず満足な形で処理されま
せんでした。日本以外の国では、異物混入は重大な問題ではないと言う亊の表
れです。

では日本の偽装問題の現状を考えてみると、重要な改善策の一つは競合企業と
の差別化の為に使う「フレーズ」である「産地」や「価格」で商品の差別化を
図る亊よりも、本当の美味しさや安全さを消費者に訴えて実感させて、適正な
利益を確保することでしょう。必ずしもどの地域産の何を使っていると言う必
要もないのです。製造から1週間経っても安全で美味しいものに、2日間の賞味
期限を付ける必要もないのです。

ポリシーやルールを必要以上に厳しく設定してそれを厳密に適用すると、食材
や製品の廃棄や無駄が多く出てコスト高や安定した供給も不可能になってしま
います。本音と建前がある物を、全面に出してはいけません。消費者側もそれ
を強く要求すると、白い恋人も赤福餅や不二家のケーキ等の美味しいお菓子も
市場から撤去される亊になります。企業の方はしっかりして下さい。消費者の
方は企業に対して価格やサービスで不可能に近い要求をしても無理です。こう
考えると、日本、アメリカ又中国等とどの国にも問題があり、それぞれ国柄が
表れている様に感じます。したがって、日本、アメリカ、中国は同じモノサシ
で計る亊は出来ません。 

アメリカの連邦法では、ベビーフードなど一部の食品を除いて日付の表示を義
務付けてはいません。しかしほとんどの食品には日付表示があり、それは消費
者が購入する場合の目安に使う亊と小売段階の商品ストックに必要だからです。
したがって、この日付が意味するものは不明確なものです。もっとも州や郡部
の一部では日付表示を義務付けている亊もあり、筆者が住むニューヨーク市郊
外もその一つです。この場合の日付も、期限が来た場合には期限が来た商品で
あることを明記した上で販売(値引き等をして)する亊は合法です。
(続く)

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チャーリー・下城近雄(NY在住、流通コンサルタント)
E-mail:shimojoNY@earthlink.net
○URL: http://shimojoNY.com

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