2003.7.23号
Vol. 4  ニューヨークのピッツェリア(4)
    「真髄は“クラスト・ソース・チーズ”のコンビネーション」

ニューヨークスタイルのピザは全米(又は全世界)のピザと少々異なるところ
があって、旅行者などはしばしば好みの違いを指摘する事があります。基本の
素材はピザのドウ(クラストになる)、トマトソース、チーズで、トッピング
に重点は置かれませんので、あとは調理の腕しだいですから、素材の微妙な味
と素材同士の相性や絡み具合が非常に重要なものと考えます。平均的な味覚が
鈍いアメリカ人は、どんなピザを食べても「うん、美味い」で終わってしまう
と思いますが、ニューヨーカーはそうとは限りません。

ニューヨークではイタリア系は勿論、デリカテッセンのほとんどをつかさどる
ユダヤ系や我々日本人も食に関して非常に細かい味覚を持った民族といわれて
います。ピザは何と言ってもネアポリタン(ナポリ風)が本家本元といわれま
す。これについてはやはりイタリア人に譲らなければいけませんが、ニューヨ
ークのピザといった場合はナポリ風と同一ではありません。従って20年以上ニ
ューヨーカーをやっている筆者も、充分に意見を言えるものと考えます。

ピザに使うチーズは「Low moisture mozzarella」という、通常は真空パック
等の塊で常温のまま何ヶ月間か保存できる種類のモッツァレラをシュレッド(細
かく削る)又はグラインドして使い、フレッシュ・モッツァレラ(薄くスライ
スして並べる)を使うモッツァレラ・ピザとは分けて考えます。通常のニュー
ヨークピザでは前者を使います。元々のモッツァレラ・チーズは水牛のミルク
で作ったものが本物で、その起源は南アジアやインドのインド水牛のミルクで
作られたそうです。

ニューヨークでは、ほとんどのピザ店で通常の牛乳から作られるモッツァレラ
が使われていました。しかし、その中でもこだわりの強いピザ店では、XX牧
場のFull-Creamチーズを使うとか、または大手乳製品会社のPolly-OやLand-O-
Lakes製などが多く使われ、ピザ店によっては3種類ほどを混ぜて使っていたり、
焼き上がってから最後にイタリアから直輸入の水牛のモッツァレラやパルメザ
ンのシュレッドをまぶす等の技も見られました。またトマトは南米が原産で、
元は毒性の強いフルーツの一種と考えられていたそうで、イタリアでも品種改
良が行われた現在では無くてはならない国民食の素材になりました。

クラストはクリスピーでありながら折り曲げられる柔軟性を持たなければいけ
ませんのでそのバランスが重要です。美味しいピザを作るためにはドウをその
日に手作りする必要があり、老舗ピザ店では場合によって1日に2回ドウを作
ります。冷凍ドウ等では微妙な空気の入り方などを作れません。高グルテンの
小麦粉、イーストとごく少量の塩、そして水だけで充分です。店によってはご
く少量のセモリナ粉を混ぜると聞きました。

ドウの延ばし方はある程度薄く延ばしたドウを空中に回転させながら薄く延ば
していく方法がほとんどで、直径16インチ(1インチ=2.5cmで40cm)〜18イ
ンチ位が通常のLサイズピザで、スライス売り用にはもう少し大きめに作って
いるようです。クラストもトマトソースもチーズも薄めがGood!です。レシピ
はかなり沢山聞かされましたが、どれがベストかは分りませんので皆さんもご
研究下さい。

ニューヨーク式ではプレインピザに人気がありますが、トッピングで人気があ
るのはペパロニやイタリアン・ソーセージなど1〜2品がシンプルに乗せられ
るか、半分半分等にする物です。私達はピザ屋へ行くときに、トッピングを食
べることを目的と考えません。クラストとソースとチーズのコンビネーション
がピザのほとんど全てと考える人も多いはずです。ピザハットやスバッロ等の
チェーン店系では数種類のトッピングのコンビネーションもあり、これは日本
の流行に多少近いものではないかと思います。筆者はその類いのチェーン店へ
は、余程の事がなければ行きません。そういうことが言えるのは、ニューヨー
クという全米一のピザ屋の充実した都市に住むからで、他の都市では選択肢が
狭いか、またはデリバリーやモールの中のピザ屋しかない場合もあるというこ
とを理解しています。
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